マイナーコードへのドミナントモーション




上記のコードプログレッションとディグリーを見てください。

これはEからAへ完全五度下がるドミナントモーションになっています。この場合使用するスケールは何を使うのでしょうか。
G7->Cmaj7 の様にメイジャーのドミナントモーションの場合には、ダイアトニックコードの5番目ですからGミクソリディアンスケールでOKなのですがマイナーの場合にはそう単純にはいきません。まず、この場合のトーナリティーはAmで、基本となるマイナースケールは

  A B C D E F G A

となります。
さて、E7のコードの構成音は

  E G# B D

です。
お気づきでしょうか。3度の音である G# がこのキーの基本スケール(Aマイナースケール)に含まれていません。しかし、あくまでトーナリティーは Am ですから E7 の時に Am のトーナリティーから大きく逸脱する事は出来ませんね。じゃあ、どうするか。単純に考えてみるとAmスケールの構成音の G を半音上げてみればイイのではないかと考えられます。

  A B C D E F G# A

さて、これはなんでしょうか。そうです。Aハーモニック・マイナースケールになっています。
実際に E7 の時に Aハーモニック・マイナー・スケールを弾いてみるとピッタリ合うことに気づきます。それで正解です。
さて、このままではいちいち頭の中でスケールを焼きなおさなければならないので、Eから始まるスケールに組立て直してみます。

  a b c d E F G# A B C D E  f  g# a

つまり。

  E F G# A B C D E

となります。これを名づけて Eハーモニック・マイナー・パーフェクト・5th・ビロウ と呼びます。(EHmP5↓とも書く)

さて、マイナーキーの場合のドミナントモーションについて述べましたが。実際には、次のコードが m になっているドミナントコードでは、ほぽ99%の確立でこのスケールが当てはまります。次にいくつか例を上げてみましょう。

Key Progression Scale
Am E7 Am E7 の時 EHmP5↓
C C A7 Dm7 G7 A7 の時 AHmP5↓
C C E7 Am E7 の時 EHmP5↓
C C B7 Em B7 の時 BHmP5↓

さて、いかがでしょうか。自分で試してみて納得出来るでしょうか。
この事は非常に重要な事です。メイジャー・スケール、マイナー・スケールを覚えた後、この HmP5↓ を覚えなければならないほど重要なスケールです。各種の理論書にこの事は載ってはいますが扱いが非常に低くなっています。特にジャズ理論ではマイナーのドミナントモーションの場合、オルタード・スケールやコンビネーション・ディミニッシュ・スケールについては詳細に述べられているのですが、やはり、HmP5↓の扱いは低いようです。しかしながら、それらのスケールはHmP5↓を感覚的に扱える次元に達してから考慮するべきであって、そうでなければ、例えばオルタード・スケールを使った場合、非常に取ってつけたような演奏になってしまいます。実際にそのようなケースを多々目にします。
スケールは覚えただけでは何も知らないのと同様で、感覚的に扱えるまで身につける事によって初めてそのスケールを覚えたと言えます。上記表のようなケースを繰り返し練習してみてください。それは、今、HmP5↓を使っている事すら意識しない次元まで訓練が必要です。



(C)Xou

岩田晶曼荼羅

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