音楽理論の習得


これは私見だが、ミュージシャンにとって音楽理論の習得は必要最小限で良いのではないだろうか。
理論の習得度合いは感覚の先鋭化と反比例するように思える。これは一般的に良く言われる事柄だが、事は単純ではなく、僕なりにもっと正確に言うなら

「或る時期、ミュージシャンにとって音楽理論は毒になる。」

特に極初期の場合に音楽理論を習得したが為に潰れていったミュージシャンを何人も見かけた。これは彼の中で音楽の捉え方がなにか変化したようであるが、プレイヤーとして致命的な方向だったと思われる。
さて、経験を積んだミュージシャンはどうであるか。これは、全く音楽理論を知らないのに素晴らしいプレイヤー、又は音楽理論は知っているが演奏中にはその事が重大事ではないブレイヤーの2種類に大別出来る。勿論、どちらが良いと言っているのではない。ここでは後者を調べてみる。
彼の持っている音楽理論に関する知識とはむしろ方法論と言って良いものである。自分の経験によって得られた知識、極実践的なノウハウの積み重ねである。そして、経験を積んだ後、或る時期から既存の音楽理論と共通する部分が増えていき、理論書を読む事によって、自分の方法論との類似性を見出す。これは既存の音楽理論が成立してきた歴史と同じ事を追体験しているわけである。で、この時期には、彼の中で感覚と方法論は両立しており、決して方法論が感覚を邪魔する事は無い。むしろ、一般的な音楽理論を習得する事によって自分の感覚の助けになる。
これこそが音楽理論の理想的な習得方法だと僕は思う。いかがだろう?


2003.11.29 (C)Xou